春さらば(4)
2009-04-09


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万葉集の序(つい)でに万葉仮名の話もしておきましょう。万葉仮名とは平仮名や片仮名が生まれる以前の時代、つまり文字としては中国から伝わった漢字だけが利用できた時代に、当時の人々が日本語を書き記すために考え出した方法です。万葉集の和歌は、いずれも漢字のみで記されています。漢字をあたかも仮名文字のように使い、しかもその代表的な例が万葉集だったので、いつしか万葉仮名と呼ばれるようになりました。
 万葉集の編纂には大伴家持の関与が指摘されていますが、現在の形に最終的にまとめた人物が誰であるかは不明です。しかし奈良時代末期には成立していたと見るのが一般的です。収められた約4500首の和歌を見ると、その作者は皇族や貴族や官人から遊女や乞食まで非常に広範な階層の人々であることが分かります。しかしそれらの人々がみな漢字を書く能力があり、みずからの手で自分の和歌を直接記録したと考えるのは妥当ではありません。
 この時代、和歌を詠むこととそれを文字で書き記すこととは異質の作業だったと考えるのが自然です。漢字の知識がありそれを日本語の記録に応用できたのは、大陸からの帰化人やその2世あるいは3世といったごく一部の人々に限られていました。それが時代が下るにつれて、徐々に官人や貴族へと拡大していったのです。詳細は「日本語の視覚化」(2009.2.23-24)の中で紹介しています。(つづく)
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