◎季節の言葉 蒲団・布団
2010-02-12


 夜具としての布団を季題とすることに違和感を覚える人もあろう。敷き布団は四季を問わず年中必要なものだし、掛け布団が欲しいのは秋の半ばから春先までの半年間である。特に冬の寒い間、これなしで眠ることは難しい。そう考えると布団とは掛け布団のことであり、冬の季題にしているのだろうか。多分そんな感想を持たれることだろう。まさにその通り、冬の季題として知られる。立春を過ぎたとは言え、このところの冷え込みは寒の戻りを思わせるほどに冷たい。各地で雪や冷たい雨を降らせ続けている。

  蒲団きて寝たる姿や東山 嵐雪

 作者の嵐雪は蕉門古参の高弟として知られる服部嵐雪のことである。この句は詠まれた当時から、俳諧を志す者の間に広く膾炙していたことが分かる。次の句は、そうした事情があって初めて詠まれたものだろう。与謝蕪村は嵐雪に師事した早野巴人の門下として知られ、嵐雪から見れば孫弟子にあたる人である。句には「東山の麓に住どころ卜したる一音法師に申遣す」との題詞が付いている。侘び寝には落ちぶれた者同士が一枚の蒲団を分け合って眠るうらぶれた物寂しいさまを彷彿とさせる響きがあり、蕪村らしい叙景と離俗を柱にした自在の境地がうかがえる。

  嵐雪とふとん引合ふ侘寝かな 蕪村

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