水仙は二月の花だと聞いたことがある。だが暖地では十一月の末から咲き始めている。株にもよるが独特の匂いがあり、時に微妙な匂いを醸すものもあって強すぎて嫌われるものもある。また純白の六弁花はよいとして、中央部にある花冠があまりに濃い朱色を呈すると、これも嫌われる原因になる。
総じて人間は我が儘だから気に入らないことがあると、これを容赦なく球根ごと掘り出して川に捨てたり、畑の隅に放り出す。しかし実を結ぶ術を知らない水仙はそんな程度の仕打ちで絶やされたりはしない。球根が分離して、かえって数が増えることさえある。
夏、道路際の地中に眠る球根の上に砂利が敷かれアスファルトが被せられて、すっかり舗装されてしまったことがある。それでも翌年初めには黒いアスファルトを割って、まるで雪割草の如くに芽を出したのである。生命力の強さ、しぶとく生きるとはまさにこのような様を言うのであろう。
岩を割り春を忘れぬ水仙の如くに吾は生きたかりけり 木多詠人
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